正直なところ、実感が何もない。
仕事は大打撃だった。観光業だもの。しかも春先なんて海外ゲストが8割を占める。
ただ、身に迫る危険性というのがあまり実感できなかった。
元々海外からのゲストと関わることが多かったので、きっと症状が出ていないだけで我々は保菌者だろうな、というのが同僚たちとの共通認識だった。
徐々に閑散としてきて、ついにゼロ。そりゃそうだ、なんて。
なんとなくマスクをつけて、なんとなくアルコール消毒液を用意する。
ここで最初の感染者になってはいけない。
だから市街地には出ない。
ここには満員電車もなければオフィスビルも無い。
ソーシャルディスタンスを気にするほど人がいない。
今までの日常と何も変わらない。
何も変わらないのに、会いたい人に会えなくなった。
あまりにも唐突。だってこちらの生活は何も変わっていないから。
特段会う予定があったわけではない。
けれど急に襲いかかってきた「もう会えないかもしれない」という現実。
急に遠い街になってしまった。