次の列車まで時間があり、遠くの海を眺めたりホームと駅舎のあいだを、ひとりぶらぶらと歩いたりしていた。そんな北国の無人駅。ふと、ホームのコンクリートの片隅の小さな動物に気づく。すずめだった。人の気配から逃げようとする様子だが、弱って動けないらしい。冷たい海風が当たらぬよう、体を屈めて両足ですずめを挟んだ。最初は身をこわばらせていたが、靴のぬくもりに慣れてきたのか、すこしだけ頭をもたせかけてくる。
列車の接近を知らせる自動アナウンスがながれて。鉄路のはるか向こう側に小さな影が見えてきた。乗車口付近ですずめを見ていたら、羽根を少しだけ開いて懸命に動こうとしているように見える。思わず駆け寄った、埃まみれのスニーカーに、すりついてくる。
乗客になっても、あの姿が頭から離れない。何もしてやれなかった自分が悔しい。あの子はそれでも、喜んでくれたのだろうか。体力が回復して、また、空を飛びまわってくれていたらいいのだけれど。