こんな気分のときは決まって、水のなかにいる夢をみる。
雨も降っていないのに 足もとに水たまりができていて、はっと気づくと頬が濡れている。そうして、ようやくその水たまりが自分の涙だと気づくのだ。
悲しくもないのになぜだろうと不思議におもっていると、水たまりは満潮をむかえた浜辺のように、みるみるうちにわたしの胸元まで押し寄せる。
冷たくもあたたかくもない涙の海で、わたしは水を吸って重くなった服を煩わしくおもいながら、足を進め始める。行き先はわからないけれど、何処かへといかなければならないのだ。
思うように進まない歩みに、すこしの苛立ちを覚えるわたしのすぐそばを、鈍くひかる何かが通りすぎた。目で追えず、気のせいだと思った次の瞬間も、ひとつ、ふたつとわたしを追い越してゆく。目を凝らしてみて、…ああなんだ、魚か。ちかくの川からここまできたのか、突っ立つわたしにぶつかることなく魚たちはすいすいと泳いでゆく。それを見てわたしは そうか、泳げばいいのだ、と妙に納得するのだ。
つま先で地面を蹴って、躊躇いもなく泳ぎだす。本当なら濡れた服のせいで泳ぎにくいはずだけれど、夢のなかのわたしは、まわりの魚と同じように なめらかに、そしてのびのびと水のなかを泳ぐ。
そうしていつの間にか 涙はとまり、けれど行先はわからないまま わたしは水を掻く。不安と戸惑いを抱えながら、これまたいつの間にかコバルトブルーに変わった海のなかを泳いでゆく。そして息継ぎをするタイミングで目が覚めるのだ。
こんな気分のときはいつもそう。理由はわかっている。夢に見せなくてもいいよ。ちゃんとわかってる。覚悟を決めなくてはいけないのだ。