一人暮らしを始めて2週間。
すごく満足してる。
何より自分がこれほどインドア派だと知ったのが驚きだった。
ずっと、親のせいで家が居心地が悪いと思っていたけど、違ったのだ。
もちろん7-8割は親。
あの二人が仕事で家を出ていってからの幸福度は爆上がりしたから。
実家で一人暮らしって一番気楽な生き方だと思うけど、在宅ワークなのに私は毎日逃げるように仕事を切り上げたら即、外出していたように思う。
実家にいたときは気づかなかったけど、今思うと、実家の周りの環境も私に合ってなかったのだ。
田舎のムラ社会。
3代住んでやっとこの土地の人間と認められるような超閉鎖的な町内に20年前に引っ越してからずっと両親ともに町内ですごく浮いていたし、めちゃくちゃ嫌われていた。
そりゃ外面は異様にいいのに、毎日家の中から怒鳴り声と悲鳴とガラスが割れる音が聞こえれば誰だって警戒するよね。
しかも、10年前からいきなり寺の住職になって、家を改装。
お経までそれに加わったから、怪しさも爆発していたと思う。
表立っては言わないけど、裏で陰口噂話がすごかったのは知ってたし、そんな親と怒鳴りあい取っ組み合いの大喧嘩を毎日していた行き遅れの娘と思われてるのもわかってた。
在宅ワークなんて言葉がまだ浸透する前から、ずっと家で仕事してたので、ニートと思われてる可能性もある。
家同士の距離が近くて、家の中の会話はかなりの確率で外に筒抜けだし、隣の家の老夫婦の爺が毎日毎日壁越しにこっちをジロジロ見てくるのもほんっとに気持ち悪かった。
今いるアパートは鉄筋作りなので、実際はマンションになるんだけど、家賃は木造並み。
うっすら隣の家の話し声が聞こえても、耳栓があれば気にならないレベル。
何より単身者が多いせいか、昼間はほとんどの住人が仕事に出かけていて静かだし、高台の中腹にあるアパートからはちょっと見晴らしがよく、外からの視線も気にならない。
自分がこれまでどれほど自意識過剰だったか、ここにきてやっと気が付いた。
常に見られてる意識、例えばそれが女優さんとかであれば、美に磨きをかけるモチベーションにつながるのだろうけど、ムラの監視社会はただ息苦しいだけだった。
どんなに取り繕っても、家の中の私は周りの人みんな知ってて、そっちが本性だと思われていて、私が心底嫌った住職と同じなのも苦しかった。
今のアパートは実家から車で15分ほど。
大した違いはないと思ってたけど、だれも私を知ってる人がいないという環境なのがすごく快適で、だれも私を見てないし、噂しないし、監視もされない。
外でムラのおばさまたちがしゃべってる声が家の中にまで響いてきて、うるさいなと思いながら自分のことを言われてるのでは、と気になることももうない。
私だって、いい子でありたかったよ。
どこにいても丁寧で礼儀正しい優等生だった私が、大声出しながら大人の男を相手につかみかかったり、物を投げつけてた理由を近所の人らは知らない。
誰もあの家で私を守ってくれなかったから、自分で戦うしかなかったのに。
両親があの家を出ても、私はその残像に苦しめられてたのかもしれない。
自分が貼られた「家庭内暴力娘」のレッテルをはがせなかったし、住職のように外面を良くして取り繕うことも恥ずかしくて、外でもいつも不愛想だったし、隙を見せないように虚勢を張り続けてのだ。
やっとわかったよ。
私こんな風に静かに穏やかに暮らしたかったんだ。