ああ、振られた。
遅いよって。
どんどん離れていっちゃう、自分が異物であるって認められなくてすがってしまう、彼に言われたその言葉をそっくりそのまま今、追体感していることと、大事にしたい、一緒にいたい、いることを選んだと伝えたら、そう返された。
確認した。もう気持ちがないことも、夜通しの通話も、そういう遊びも、もう。
気持ちはフラットだよと。
新しい人ができて、私はその人に、あらゆる意味で勝てない。
だからたとえその人と一緒にいるところを見ても、苦しいけど、もう泣き叫んで困らせないと約束して、また細く、彼と繋がることを許してもらった。
優しく返ってくる敬語に、かつてと違う距離を感じながら聞き返した。
以前は、フラットではない感情は、あった?と。
うん、と返ってきて、ああ、この人に大事にされていたのは確かにあったことなんだ、ときつく心に刻んだ。
あの声音は、もう聞けない。
優しく私の本名を呼ぶ、フラットではない何かを含んだ声。
俺のとこにも来てよって、無視してしまったあの時に、飛べるものなら飛びたい。
私のわがままで振り回すのに、私といたがる理由がわからないと言ったら、俺はもう一緒にいることを選んだんだと言ってくれた。何度も、何度も。
だから、叶う事なら、私も一緒にいることを選ぶよって、伝えに、行きたい。
遅いよ、の声を私は一生忘れない。
かつてあった、フラットではない何かをほんの少し含んだ声。
人生最後の恋だった。
絶対に、忘れない。