ずっと、小さな頃から泣かなかった。
辛いことや悲しいことがあっても、人の前では歯を食いしばってでも泣かずに耐えた。
どうしても泣いてしまう時は、いつも1人だった。
誰もいないところで、泣いて、泣いて、また、人のいる場所へ戻っていった。
ある時から、泣いていい環境になり、泣いた。
大好きな友達や恋人の前で泣いた。
何かと泣いて、何かと笑って、感受性豊かだなと微笑ましく受け入れてくれる人たちの中で、ありのままでいられた。
だけど、また、大人になって、わたしは涙をなくした。
昔と同じように、それ以上に、人の前で笑うという術を覚えたわたしは、1人の時しか泣けなくなった。
泣かないことが偉いわけでもなく、泣かないことが強いわけでもなく、むしろ泣ける人の方が強くて優しいのだと年を重ねて気付いても、わたしは未だに泣けないでいる。
大切な人をこの世から失った時も、今まであった生活を手放した時も、傷つけられて、ボロボロになった時も。
癖になるんだ、と思う。
誰かの前で泣けたら、思った感情のままを見せられたら、もう少し気持ちが楽になるのかなと思う時もある。
でも、未だにわたしは、そんな場所を見つけられずにいる。
とある歌の歌詞を、カラオケで歌った時、わたしの生い立ちを知っている友達が言った。
きっと、あなたはこういう環境だったんだね、と。
うん、そうだね、と言ったけど、やっぱり泣けなかった。
優しい人たちが周りにはたくさんいるのに、わたしは今も心の鍵を外せずにいる。
いつか、と思うのに、そのいつか、はやってこない。
いっそのこと、涙なんて、なくなってしまえばいいのにと思った。
誰かの前だけでなく、1人でいる時にも泣かなければ、いつかは悲しみや苦しさも消えてしまうんじゃないかって、ありえないことを思って、また、泣いてしまう。
誰もいない、この場所で。